2011年11月28日月曜日

ねぶたの家 ワ・ラッセ

海外グループの片柳です。

今回は、私たちが建築設備設計を担当した、「ねぶたの家 ワ・ラッセ」を紹介させていただきます。
本施設は2011年1月にオープンし、先日1年目検査のため久しぶりに現場入りしました。その時、改めて「いい施設だなあ」と思い、ぜひこの「エンジニアの声」でご紹介したいと思いました。



「ねぶたの家 ワ・ラッセ」は、JR青森駅の海側に建設された「ねぶた展示施設」です。
建築は、Molo Designd/dt ArchFrank la Riviere Arichitectsによってデザインされています。
Molo Designはカナダバンクーバを拠点にしている海外のデザイン事務所で、彼らのプロダクトはニューヨーク近代美術館を含め、世界中の美術館やギャラリーで評価され使用されています。

防錆性能の高いリボン状の鋼板スクリーンで覆われた外観
撮影 Shigeo Ogawa
 



















この施設の中心である「ねぶたホール」は、毎年のねぶた祭り本番に出陣し、上位に入選されたねぶた5台が展示されています。「ねぶたホール」では、祭りの音頭が力強く流れていて、「活気のある祭りの中」にいるような気分を味わうことができます。

ねぶたホールに展示された「ねぶた」
撮影 Shigeo Ogawa




















ここで、ねぶたの電源に関して話しをさせて下さい。
ご存じの通り、ねぶたは多くの照明により構成されています。
祭り本番中のねぶたは、中にディーゼル発電機が搭載されており、自家発電により照明を点灯しています。


それに対して、「ねぶたの家 ワ・ラッセ」で展示されているねぶたは、ねぶた自体に発電機を搭載しているわけではありません。こちらは、私たちが構築した電源システムにより電源供給され、照明を点灯しています。

設計、及び施工中に懸念したのは、「ひとつの空間に、5台のねぶたを展示して、明るすぎてしまわないか?」ということです。これらに関しては、祭り時のねぶた周辺の明るさを実測し考察しました。その結果、ねぶたは見た目は明るいですが、照度としては、ねぶた周辺で100lx程度であり、過剰な照度ではないという結論でした。
しかし、省エネルギーの観点から、ねぶたの明るさを可変できるとよいのではないかと考え、大型調光器の導入を計画しました。

そして、現在の「ねぶたホール」は、明るすぎず、しかしインパクトのある空間となっています。写真の白いボックスが大型調光器で、電源電圧を抑制することで、ねぶたの消費エネルギーを低減しています。

ねぶたへの電源電圧を抑制する大型調光器





















「ねぶたの家 ワ・ラッセ」はオープンして1年が経ちますが、絶え間ない来館者に恵まれているようです。
もし、お近くに行くことがありましたら是非立ち寄って見て下さい。


青森県民の魂と誇りである「ねぶた」と共に、この「ねぶたの家 ワ・ラッセ」がいつまでも栄え続けることを願っています。

海外部 片柳 哲
http://www.ptmtokyo.co.jp/

2011年11月14日月曜日

私たちの節電 今夏のまとめ1

環境部の井村です。
すっかり涼しくなり秋の雰囲気が漂ってきたと思ったら、実は冬は今夏よりも厳しい節電が必要になるとの報道がありました。近藤さんのブログ(9/12)にもありましたが、節電を持続することが重要ですね。
さて、「節電」シリーズは今回と次回の2回で一応の今夏のまとめをしたいと思います。

節電意識
社内の節電を進めるにあたり、一番苦労した(している)のが社員の節電意識を高めることです。刻々と変わる執務環境を敏感に感じ取り、自立分散的な節電行動につなげていくことが理想ですが、ある程度の仕組みは必要と考え、私たちは節電パトロール隊を組織しました。グループ毎に選出したパトロール隊同士がコミュニケーションを取りながら、節電行動を決めて実行していくことを目指しています。
具体的な行動としては、部分的な消灯、部分的な空調停止、全体的な外気冷房を行うための空調停止・窓開け等です。今夏の成果としては、空調停止・窓開けが数日実行できた程度でしたが、今後に期待です!
このように腕章を作りました。




















意識を高める行動
節電を通して強く感じたことがあります。それは、私たちは照明のある空調された空間にいることに慣れすぎていて、それを変更するという意識をあまり持ちあわせていないということ。そして、私たちが身を委ねている環境が、なんとも無機質な空間であるということです。このことに気づかせてもらったのが、お付き合いのある建築設計事務所の方々と節電について意見交換をさせて頂いた時でした。彼らの発想は私たちのそれとは異なり、ローテクとも言えるような有機的?な仕組み(グリーン+ファン、湿らせたダンボールによる気化冷却等)で、いかに気持ちの良い空間を作り出すかということでした。これをアイデアのヒントとし、試験的にグリーンプロジェクトなるものを実行しました。
狙いは良かったと思うのですが、ヘデラの水耕栽培が思っていた以上に難しく、何度か枯らしてしまいました。来年は改良を加え実行したいと思います。「何故布ダクト?」と思った方は、ブログアーカイブを是非ご覧ください!

節電結果(月積算電力量ベース)
もちろん今夏の節電で重要だったのはピーク電力(デマンド)の削減ですが、当社はテナント入居なので昨年の実績で把握できているのが電気料金請求用の月積算電力量なので、わかりやすい成果としてはこれの比較となります。おおむね30%を超える削減を達成できました!

ピーク電力(デマンド)今夏分については、設置したリアルタイム電力モニターでデータがありますので、こちらについてはメカニカルな内容を取り仕切ってくれた中村さんから次回にまとめてもらいたいと思います。

環境部 井村 修二

2011年11月2日水曜日

節電コンサル

海外グループの片柳です。
今回は、私たちがこの夏に外資系企業向けに実施した節電コンサル業務の内容と結果をご紹介します。

1 節電目標
今年の夏は、原子力発電の停止に伴い、電力不足をカバーするため、「節電」が必要とされました。この「節電」に関して、「15%削減」をよく耳にしたかと思います。

この「15%」削減という数字は、経済産業省から発令されたもので、昨年の電力使用量と今年停止した原子力発電所の発電量を分析し、この値以上の電力削減ができれば、電力供給をストップすることなく夏を乗り越えられると想定された値でした。

ここで注意しなければならないのは、この夏の節電で重要だったのは、「ピーク電力の削減」であり、「合計使用電力の削減」ではないということです。「ピーク電力は昨年同様」だが「夏の合計使用電力は昨年の30%削減」では意味がなく、前者は「節電」、後者は「省エネ」に定義されます。

また、特定の条件に該当する企業に対しては、節電期間の7月から9月の間で15%削減が達成できない場合、ペナルティが課せられることが発表されました。

2 節電コンサル
私たちは建築設備を構築するコンサルタントですが、この夏はピーク電力の15%削減を実現するコンサルティング業務を依頼されました。普段は「省エネ提案」や「省エネシステムの検討」など長期的なエネルギー削減が課題ですが、今回は「絶対的かつ緊急のピーク電力の削減」が課題となりました。

プロジェクトを進めるに当たり、まず始めに私たちが実行したことは、「昨年のピーク電力値の把握」です。これに関しては、昨年の1時間当たりの使用電力量をビルマネージメントシステムから抽出・分析し、ピーク電力値を算出しました。ここで、昨年のピーク電力値に75%(15%削減)を乗じた値が、今年のピーク電力値となります。

次に現地調査を行い、現況システムの把握、電力使用状況の把握、及び削減可能な項目のピックアップを行いました。調査当日にパッとオフィス内を見渡してみると、削減できそうな機器が見当たらなく、一瞬不安になりました。通常のやり方では15%削減は難しいのでないか?と。

しかし、私たちは建築設備のスペシャリストです。できる限り通常の業務形態に近い状態で「ピーク電力の15%削減」ができるように検討、及び分析を行いました。小さな節電内容でも、一つ一つ積み上げることで、20%削減を超える節電計画内容を提案することができました。

そして、節電期間の7月に入る前に現場検証を行い、実際に20%削減が可能かどうか確認しました。トータルでどんなに多くの省エネができたとしても、たった1日でもピーク電力の削減が達成できない場合、私たちは「スペシャリスト」ではなくなってしまいます。

節電期間がスタートした7月からは、毎週1回ごとにピーク電力の確認を行いました。ピーク電力の確認方法は、昨年のピーク電力の算出同様に、ビルマネージメントシステムから計測値を抽出し、昨年のピーク電力と比較します。ちなみに、昨年のピーク電力は8月中旬頃に計測されていました。7月から9月の間、私たちはこのような分析を続けました。

3 節電結果
今年は8月末くらいから比較的過ごし易い気候だったため、節電し易い環境となりました。節電期間7月から9月の結果は下記のようになり、大きく目標値を達成することができました。


設備項目ごとの削減率は下記のようになります。


3.1 照明による節電
照明に関する節電は、明るさダウン、及び白熱灯の不使用を実施しています。明るさダウンに関しては、単に照明ランプを取るのではなく、適材適所の照度を分析、及び提案した上で、明るさを変更し、節電を実現しました。

3.2 空調による節電
空調に関しては、設定温度を高く設定することで節電しています。設定温度を高くすると、人によっては不快に感じる可能性があるため、PCに接続して使用できるUSBファン(扇風機)の採用を提案しました。

USBファン(扇風機)の消費電力は2.5W/台程度です。仮に100台設置したとしても、消費電力は250W程度であるため、USBファンは節電しながら快適性を保つことができる便利なアイテムです。




3.3 コンセントによる節電
コーヒーマシンやウォーターサーバの停止、コピーやプリンターの台数制限を実施しました。これらはクライアントへの需要率のヒアリングが重要になります。

4 節電を経て
「節電」で重要なのは、「少しの努力を惜しまないこと」、そして、「モニタリングすること(見える化)」だと考えています。
この夏は「節電」が何よりも重要でした。これは、「ピーク電力時の電力需給」が「迫られた問題」だったからです。しかし、地球規模で考えればトータルエネルギーを削減する「省エネ」が重要なテーマです。私たちエンジニアは、この「省エネ」を単なる「ポーズ」や「台詞」ではなく、「本当に迫られた問題」と捉えていく必要があります。

海外部 片柳 哲
http://www.ptmtokyo.co.jp/