2011年11月2日水曜日

節電コンサル

海外グループの片柳です。
今回は、私たちがこの夏に外資系企業向けに実施した節電コンサル業務の内容と結果をご紹介します。

1 節電目標
今年の夏は、原子力発電の停止に伴い、電力不足をカバーするため、「節電」が必要とされました。この「節電」に関して、「15%削減」をよく耳にしたかと思います。

この「15%」削減という数字は、経済産業省から発令されたもので、昨年の電力使用量と今年停止した原子力発電所の発電量を分析し、この値以上の電力削減ができれば、電力供給をストップすることなく夏を乗り越えられると想定された値でした。

ここで注意しなければならないのは、この夏の節電で重要だったのは、「ピーク電力の削減」であり、「合計使用電力の削減」ではないということです。「ピーク電力は昨年同様」だが「夏の合計使用電力は昨年の30%削減」では意味がなく、前者は「節電」、後者は「省エネ」に定義されます。

また、特定の条件に該当する企業に対しては、節電期間の7月から9月の間で15%削減が達成できない場合、ペナルティが課せられることが発表されました。

2 節電コンサル
私たちは建築設備を構築するコンサルタントですが、この夏はピーク電力の15%削減を実現するコンサルティング業務を依頼されました。普段は「省エネ提案」や「省エネシステムの検討」など長期的なエネルギー削減が課題ですが、今回は「絶対的かつ緊急のピーク電力の削減」が課題となりました。

プロジェクトを進めるに当たり、まず始めに私たちが実行したことは、「昨年のピーク電力値の把握」です。これに関しては、昨年の1時間当たりの使用電力量をビルマネージメントシステムから抽出・分析し、ピーク電力値を算出しました。ここで、昨年のピーク電力値に75%(15%削減)を乗じた値が、今年のピーク電力値となります。

次に現地調査を行い、現況システムの把握、電力使用状況の把握、及び削減可能な項目のピックアップを行いました。調査当日にパッとオフィス内を見渡してみると、削減できそうな機器が見当たらなく、一瞬不安になりました。通常のやり方では15%削減は難しいのでないか?と。

しかし、私たちは建築設備のスペシャリストです。できる限り通常の業務形態に近い状態で「ピーク電力の15%削減」ができるように検討、及び分析を行いました。小さな節電内容でも、一つ一つ積み上げることで、20%削減を超える節電計画内容を提案することができました。

そして、節電期間の7月に入る前に現場検証を行い、実際に20%削減が可能かどうか確認しました。トータルでどんなに多くの省エネができたとしても、たった1日でもピーク電力の削減が達成できない場合、私たちは「スペシャリスト」ではなくなってしまいます。

節電期間がスタートした7月からは、毎週1回ごとにピーク電力の確認を行いました。ピーク電力の確認方法は、昨年のピーク電力の算出同様に、ビルマネージメントシステムから計測値を抽出し、昨年のピーク電力と比較します。ちなみに、昨年のピーク電力は8月中旬頃に計測されていました。7月から9月の間、私たちはこのような分析を続けました。

3 節電結果
今年は8月末くらいから比較的過ごし易い気候だったため、節電し易い環境となりました。節電期間7月から9月の結果は下記のようになり、大きく目標値を達成することができました。


設備項目ごとの削減率は下記のようになります。


3.1 照明による節電
照明に関する節電は、明るさダウン、及び白熱灯の不使用を実施しています。明るさダウンに関しては、単に照明ランプを取るのではなく、適材適所の照度を分析、及び提案した上で、明るさを変更し、節電を実現しました。

3.2 空調による節電
空調に関しては、設定温度を高く設定することで節電しています。設定温度を高くすると、人によっては不快に感じる可能性があるため、PCに接続して使用できるUSBファン(扇風機)の採用を提案しました。

USBファン(扇風機)の消費電力は2.5W/台程度です。仮に100台設置したとしても、消費電力は250W程度であるため、USBファンは節電しながら快適性を保つことができる便利なアイテムです。




3.3 コンセントによる節電
コーヒーマシンやウォーターサーバの停止、コピーやプリンターの台数制限を実施しました。これらはクライアントへの需要率のヒアリングが重要になります。

4 節電を経て
「節電」で重要なのは、「少しの努力を惜しまないこと」、そして、「モニタリングすること(見える化)」だと考えています。
この夏は「節電」が何よりも重要でした。これは、「ピーク電力時の電力需給」が「迫られた問題」だったからです。しかし、地球規模で考えればトータルエネルギーを削減する「省エネ」が重要なテーマです。私たちエンジニアは、この「省エネ」を単なる「ポーズ」や「台詞」ではなく、「本当に迫られた問題」と捉えていく必要があります。

海外部 片柳 哲
http://www.ptmtokyo.co.jp/

2 件のコメント:

  1. 今回の震災を機に、日本社会ではエネルギーに対して、よりシビアな取り組みが求められてきているものと思います。

    今夏の節電のモニタリング等の成果が単に一過性の「節電」として、終わることがなく、「省エネ」として定常化していくことを期待しております。

    御社の取り組みや考え方がとても伝わってまいりました。今後もブログを期待しております。
    ありがとうございました。

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  2. コメントいただきありがとうございます。

    大きな成果は、一歩一歩の積み重ねだと思っています。
    日本や世界における省エネについても同じで、
    小さな省エネでも、それを積み重ねて行くことが大切で、私どもエンジニアはこれを実行するとともに、提案・促進していく必要があると感じています。

    今後とも弊社ブログをご覧いただけますようお願い致します。

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