2012年6月11日月曜日

討論会のルール

建築部藍澤です。

昨年よりこちらのブログにて、節電の取り組みなど、私たちの社内での活動をご紹介させて頂きました。
その活動内容を話し合う場を、私たちは「討論会」(当初は「おしゃべり会」?)と呼んでおり、今日はその中身を一部ご紹介させて頂きます。

今までの活動内容は節電活動以降、ブログ作成、アイディアコンペ参加、社内緑化等がありましたが、これらのアイディアは全てこの場で話し合い、生まれました。このように様々な種類のアイディア活動が生まれた理由は、私たちが決めた話し合いのルールにあると思います。

それは、「討論会はブレインストーミングで行う」ということです。

討論会では設計事務所の社員という立場から、今気になること、疑問に思うことに対して何かを変えてより良くしたいという思いを提案していきます。そして提案されたアイディアの欠点を探すのではなく、どうやったらそれが実現できるかを根気よく話し合っています。

実務の会議では欠点をなくしていくことは大切ですが、ブレインストーミングを意識して話し合うと、みんなが思いもよらないようなアイディアに広がっていくことを実感しています。

そんなブレインストーミングについて少し調べてみると、こんな定義をされている方がいらっしゃいました。

最近メディアで頻繁に取り上げられているコミュニティデザイナー山崎亮さんの著書「まちの幸福論」で以下のように提示していました。

①意見の批判や判断をせず、②質より量を優先し、③笑いと奇抜さを重視しながら、④相乗り・横取りは大歓迎。とありました。

「討論会」のルールはまさにこれだと共感しました。

ひとつの会社組織の中で討論会のような場があり、その中でのコミュニティがうまく形成されると、みんなが率先してそのコミュニティに参加することができます。その実践方法としてブレインストーミングは私たちにうまくあてはまった方法だと感じました。

まだまだ討論会でのアイディアは尽きませんので、近いうちに設計事務所ならではの悩みである「紙のゴミ問題」について、このブログで発表できたらと思います。

建築部 藍澤和孝

2012年4月25日水曜日

3DPDFによるCFD計算結果の可視化


環境部の小縣です。
主にCFDなどのシミュレーションを担当しています。
今回は、CFD計算結果を相手に伝える際に役立つ「3DPDF」というツールを紹介します。

CFDとは、コンピュータを用いた流体解析のことであり、弊社では室内気流分布や都市の風環境を予測・評価するために用いています。CFDの計算結果を確認する方法としては、専用の可視化ソフトを用いて、温度分布図や風速分布図を描画させるのが一般的ですが、その結果を第三者へ伝える必要がある場合には、jpegなどの画像に出力し報告書などに貼り付けます。しかしこの方法の場合、3次元でCFD計算を行っていたとしても、最終的に相手に伝わる時点では、画像という2次元の情報になってしまいます。

そこで、この問題を解決してくれるのが「3DPDF」です。PDFといえば、アドビシステムズによって開発された電子文章に関するフォーマットのことですが、実は、このPDFに3次元版があるのです。以下の場所にサンプルをアップしてありますので、ダウンロードして最新のAdobe Readerで開いてみて下さい。

≪3DPDFを用いたCFD計算結果可視化例:人体周りの温熱環境解析≫
風速分布:http://www.ptmtokyo.co.jp/blog/humanEnvironment_U2.pdf
温度分布:http://www.ptmtokyo.co.jp/blog/humanEnvironment_T.pdf

これらのファイルが問題なく開くと、人体モデルとその周りの気流および温度分布に関する画像が表示されます。3DPDFでは、従来の電子文章とは異なり、表示されている画像をCAD感覚で回転させたり、拡大・縮小させたりすることができます。

この「3DPDF」は、多くの方が普段から使っているAdobe Readerで表示することができます。つまりこの3DPDF形式を用いれば、専用の可視化ソフトがなくても、CFD計算結果を3次元情報として第三者に伝えることができるのです。例えば、CFD計算の依頼者へ計算結果を説明する際に大いに役立ちます。

環境部  小縣 信也
http://www.ptmtokyo.co.jp/

2012年4月18日水曜日

理想の空調空間

環境部の細野です。
今回は「理想の空調空間」について書かせていただきます。

このテーマは、スペインを旅行したときの体験がきっかけです。

スペインではマドリードからトレド、グラナダ、バルセロナと各都市を転々とし、各都市のカテドラルを訪れました。
カテドラルに入ったときにまず感じたことは「寒い」ということでした。外は半袖で十分過ごせるくらいの気候なのに、カテドラルの中は上着を羽織ってもまだ寒いと感じるくらいでした。もちろんエアコンが効いているわけはありません。

その理由は建物外壁の熱容量が大きいため、室内側の躯体表面温度が低くなり、熱放射により熱が奪われるためです。

カテドラルは石造りで、石の熱容量は種類にもよりますが、おおよそ500kcal/m3Kで、木材や石膏ボードの2倍程度の熱容量があります。つまり、石の方が2倍温まりにくいということです。さらに、壁の厚みは1mぐらいあったと思うので、日本の一般的な建物とは比較にならないくらい熱容量が大きいのです(日本の住宅で使用される木材や石膏ボードは200-270kcal/m3・k程度)。

僕はこのカテドラルの内部が「理想の空調空間」なのではないかと思いました。空調してないのに「空調空間」というのは少し変な気もしますが、言いたいことはつまり、「空調していないのに温度がコントロールされている」ということです。もちろんスペインの気候や開口部が極めて少ないことも影響しているはずですが、熱容量によって、カテドラルの荘厳さを携えた「寒さ」はコントロールされていました。

カテドラルの外装
















同じスペインのサクラダ・ファミリアの内部も訪れましたが、他のカテドラルが持つ雰囲気を感じませんでした。それは「寒さ」を感じなかったからです。その理由は、開口部が多く、内部にたくさんの人がいたためだと思われます。
この「寒さ」を感じさせずに人々を圧倒するその荘厳な雰囲気が、サクラダ・ファミリアが世界中から注目されている理由の一つなのかもしれません。
もしかすると、この「寒さ」を感じないサクラダ・ファミリアは、自然との調和を目指したガウディにとっての「理想の空調空間」だったのかもしれません。

サクラダファミリアの内装
















細野 和則

2012年2月6日月曜日

建築環境デザインコンペティション

建築部の藍澤です。
今回はお知らせです。

現在発売中の「新建築20122月号」に弊社の森村武雄会長、
森村潔社長のインタビュー記事を掲載して頂いております。

東京ガス主催の建築環境デザインコンペティション25周年記念の特別インタビューということで、
25年を経て設備から環境の時代へ」という内容です。
25年前の第1回コンペにて、弊社の提案が最優秀賞を受賞したということで、
今回このような機会をいただきました。
インタビューの詳細についてはぜひ誌面(P032-P033)をご覧頂下さい。
 
新建築 2月号表紙















   


そして、昨年私達は同コンペの第25回目にあたる、
「場所に向かい合うコミュニティ施設」のテーマに対し、2つの提案をしました。

コンペ応募資料1
 














 
コンペ応募資料2





















普段の業務とは異なるアプローチで環境についてアイディアを交わし、
みんなの考えを一枚のシートにまとめあげたことは、大変有意義な経験であったかと思います。
残念ながら結果は落選でしたが、今年もぜひ挑戦したいと思います。


建築部 藍澤和孝

2012年1月30日月曜日

照明の明るさ

環境部の前山です。
今回のテーマは、「照明の明るさ」についてです。

1.はじめに
 東日本大震災に伴う今回の節電の動きを受けて、“余計な明かりは消してみよう”と試みたオフィスはあちこちにあると思います。私達のオフィスでも、昨年の7月から節電の為に天井照明を間引きして、およそ半分の明るさで過ごしています。暗いと感じて、常設の手元照明を点けている人もちらほらいますが、ほとんどの人は現状を受け入れてくれている様です。

 さて、節電はやりたいんだけど、暗いのを我慢するのも嫌だし、文句を言われるのも嫌だからと躊躇した施設担当の人達も多くいたと思いますが()、そもそも「必要な明るさ」とはどうやって決まっているのでしょうか?

2.いくつかの基準
 明るさは、照度という指標で表し、ルクス[lx]という単位を用います。国内で最も多く参照されている基準はJIS照度基準であり、一般的なオフィスを例にとると、750ルクスという照度が設定されています。

 この他、労働安全衛生法(昭和47年制定)では、精密な作業を行う事務室では、300ルクス以上の照度を必要としています。海外に目を向けると、アメリカでは200~500ルクスという基準が出てきます。比較してみると、JIS基準はかなり高い様に見えますね。

3.JIS基準の見直し
 JIS照度基準は、2010年に30年ぶりに改定されています。それまでの基準では、事務室は「5001000ルクス」の様に範囲で表現されていたのが、分かり易い様に推奨照度を「750ルクス」と代表値で表記されました。

 ところが、今回の電力供給不足の動きを受けて、JIS照度基準は20115月に推奨照度を補足する意味合いで、もとの照度範囲表記「5001000ルクス」を復活させているのです。この見直しは、利用実態に応じて適切な照度を設定して、より節電を促進させようとする意向の表れだったといえるでしょう。

 更に言えば、2010年の改訂で明記した推奨照度が過剰だったという見解が反映されたともいえます。新規ビルの設計においては、他のビルとの競争により、JIS基準よりも照度設定を高くする傾向があり、結果として省エネに逆行する状態となっていました。

4.これからの明るさ
 照明設計を行っていると、明るすぎるというクレームは稀ですが、暗いと必ずクレームになります。それ故に、照明設計者の中には「暗い」を避ける為に、過剰に照明を設置する設計者も少なくありません。新しくオフィスを計画する施設担当の方々にも、同じような傾向はあるかもしれません。

 ちなみに私達のオフィスの天井照明は、概ね800ルクスから400ルクスに半減させましたが、手元照明を併用していることもあって、意外なことにクレームはほとんど出ていません。実際に400ルクスの照明環境で、細かい設計図を見ながら仕事をしていますが、個人的にはまったく支障はないと感じています。 

自席の机上照度 389lx
  
照明環境を考える人達は、「過不足のない明るさ」というものを、もう一度検証してみる必要があると思います。そして、自信を持って「間引き消灯するくらいなら、最初から照明器具を減らしてしまいましょう」と提案していきたいものです。

 最近、力を入れているこの提案は、あちこちの自治体でも受け入れられてきています。
それらを見ると、時代は変わってきたんだなぁと日々感じるこの頃です。


環境部 前山

2012年1月13日金曜日

カーテンを閉めると結露する!?

環境部の小縣です。
今回は窓ガラスでの表面結露について考えてみます。

1.はじめに
 結露は、湿った空気が冷たい固体表面に接触することによって発生します。結露というと、冬の窓ガラスに水滴が付着する現象を思い浮かべる方が多いと思いますが、夏に缶ジュースの表面に水滴が付着するのも結露現象の一種です。
 建築分野では、結露を発生部位の観点から表面結露と内部結露の2つに分類します。表面結露とは構造体表面における結露のことを指し、内部結露とは構造体内部での結露のことを指します。私たちが普段生活する中で目にするのは、ほとんどが窓での表面結露です。今回は、この窓ガラスでの表面結露について考えてみたいと思います。

2.結露が発生しやすい条件
 窓ガラスでの結露は、ガラスの表面温度が低く、周辺空気の相対湿度が高い時に発生します。相対湿度が高くなる最も大きな要因は、室内に水蒸気発生源が存在することです。水蒸気発生源と言えば、調理や加湿器、浴室などが代表的な例ですが、意外と見落とされがちなのが、室内干しの洗濯物、観葉植物、人体、石油系ストーブです。これら発生源は、水蒸気発生量に違いはありますが、全て相対湿度の上昇に寄与します。一方、ガラス表面温度を低下させる要因は外気温度です。外気温度が低いほどガラス表面温度も低くなります。そして、この表面温度の低下を助長するものがあります。それがカーテンです。

3.ガラス表面温度とカーテンの関係
 カーテンには、僅かですが断熱効果があります。カーテンを閉めると室内から室外への熱の流出が抑えられ、暖房負荷は減ります。しかし、断熱効果があるということは、熱の通過を妨げるということでもあります。以下の図は、外気温が0、室内温度が20の時のガラス室内側表面温度を示しています。

カーテン有りの場合のガラス室内側表面温度は4.1℃であり、ガラスのみの場合の6.2に比べ約2低くなっています。これは、カーテンを閉めると熱の流れが妨げられてしまうため、ガラス表面まで到達する熱量が減ってしまうからです。断熱性能を向上させるカーテンですが、結露に対してはマイナスに働いてしまいます。では、断熱性能の向上と結露危険性の低下を両立させるにはどうすればいいのでしょうか?
 カーテンではなく雨戸を閉めるというのが一案です。カーテンには断熱効果があると述べましたが、雨戸にもカーテンと同等の断熱効果があります。雨戸を閉めた場合の表面温度を以下に示します。
雨戸有りのガラス室内側表面温度は10.8℃であり、ガラスのみの6.2℃に比べ約4℃高くなっています。これは、雨戸を閉めることにより、雨戸から外へ逃げていく熱が減り、雨戸よりも室内側にあるガラスの温度が上昇するためです。よって、雨戸であれば、断熱性能向上と結露危険性の低下を同時に満足させることができるということになります。

4.その他の結露対策
 前章では、ガラス表面温度の低下を防ぐ方法の一例を紹介しましたが、もちろん室内の相対湿度を低減させることも結露対策として有効です。まず水蒸気発生源を特定し、その発生源からの水蒸気発生量を低減させることができるかを検討します。石油系ストーブを使っているのであれば電気式暖房器に変更し、加湿器による加湿を行なっているのであれば加湿量を見直します。人体や観葉植物からの水蒸気発生はコントロールするのが難しいため、適度に換気を行うのが良いでしょう。
今回、結露が発生するのは高い相対湿度低い表面温度の条件が揃った時であると紹介しましたが、実際の建物では様々な要因が複雑に重なり合い結露が発生します。しかし、どのような結露もまず、水蒸気発生源と温度低下の要因を調査してみて下さい。